正規雇用の保護規制の中心となるのは解雇規制である。解雇規制は労働基準法で規定されているが、従来は、手続き的にしか書かれていなかった。たとえば、「解雇する場合は、少なくとも三〇日前に予告するか、三〇日分以上の平均手当を支払うことが必要である」とか「業務上負傷して休業している期間や産前産後の休業期間およびその後三〇日間は解雇してはいけない」という規定はあった。ところが、実際に行われた解雇が妥当かどうかについては規定がなかったのである。
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現実には、そうした判断は、裁判所の判例に委ねられてきた。判断基準が明記されていなかった理由は、この法律が成立した時代背景にある。当時は終身雇用制のもとで、一度就職した社員は定年まで勤めることが雇用慣行となっていた。それが崩壊するなかで、労働基準法の改正が要請され始め、〇四年一月の改正では、解雇についての規定が明記されることになった。労基法のなかに、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働基準法、第十八条の二)とする条文が付け加えられた。企業が従業員を解雇する場合の具体的要件は、これまでの判例のなかで、四つが示されてきた。(1)会社の維持・存続を図るために従業員の解雇が必要であること、(2)会社が従業員の解雇を回避するための努力をしたかどうか、(3)解雇の対象となった人選が合理的であるかどうか、(4)対象となった労働者に充分な説明を行い、納得させる努力を行ったかどうか、である。改正をめぐっては、企業側・労働者側それぞれの思惑が交錯したが、この改正によって事態が変わったわけではない。裁判所の判例の考え方が、そのまま法律に書き込まれたというのが、この改正のポイントだからである。伝えられるところでは、厚労省は、解雇された従業員と企業が争った際に、金銭賠償によって解決する方法を盛り込む意向があったようだ。賠償規定は、ドイツなどヨーロッパ諸国で導入されている制度だが、残念ながら、今回の改正では盛り込まれなかった。したがって、従業員と企業が解雇をめぐって争った場合、解雇が不当と判断されても、従業員には職場への復帰しか選択肢がないことになる。